なぜ遺言書の検認手続きは面倒なのか?

遺言書

遺言書には3つの種類があります。自宅保管の遺言書と公正証書遺言書、法務局預かりの遺言書です。このうち、自宅保管の遺言書のみ、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

自宅保管の遺言書のメリットとは

まず、自宅保管の遺言書のメリットについて説明しますね。これは、何と言っても手軽であることです。これにつきます。遺言書を書こうと思ったら、紙とペンがあればいつでも書けます。公証役場や法務局に何度も行く必要はありません。

手書きの遺言書は手軽

手書きの遺言書のメリットはこれです。逆にいうと、メリットはこれしかありません。

自宅保管の遺言書は勝手に開封できない

自宅保管の遺言書が封に入っている場合、勝手に開封してはいけません。もし開封すると、5万円以下の過料が課せられます(民法1005条)相続人全員が同席していても、勝手に開封してはいけないというルールになっています。

では、どうすればよいのかというと、自宅保管の遺言書の場合、家庭裁判所で検認手続きが必要です。

正確には、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所での検認です。

相続人の住所を管轄する家庭裁判所ではありません。たとえば、外国人が東京都墨田区で亡くなり、相続人である長女が京都府京都市に住んでいた場合、東京都墨田区を管轄する家庭裁判所で検認手続きをすることになります。

家庭裁判所での検認手続きはとにかく面倒

遺言書の検認手続きはとにかく面倒です。面倒なことをざっと列記すると以下です。

  • 何度も家庭裁判所に行く必要がある
  • その都度、数時間かかる。待ち時間も多い。
  • 検認手続きをするために、さまざまな書類を集めなければいけない

以下、検認の流れについて、具体的に説明しますね。実際には、家庭裁判所によって独自のルールがある場合もありますが、一般的には下記のように進みます。

検認手続きの流れ

検認手続きをする場合、次のような流れとなります。

1.家庭裁判所に検認の申し立てをする

亡くなった方の住所を管轄する家庭裁判所に行き、検認の申し立てを行います。この時、下記の書類を持参する必要があります。なお、申し立て時に家庭裁判所に行くのは、遺族の代表者のみで構いません。

申し立てに必要な書類

  • 検認申立書
  • 遺言者の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本および除籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本

上記の書類を揃えるためには、日数や費用がかかります。生まれてから亡くなるまで本籍地が変わっていない人の場合、戸籍謄本を1通取ればよいですが、通常は本籍地は何度か変更になっていることが多いです。例えば、長崎県→東京都→埼玉県→茨城県と本籍地が移動している人の場合、それぞれの市役所から、除籍謄本を取得する必要があります。正確な本籍地を覚えていない場合、順番に遡って取得しますので、除籍謄本を揃えるだけでも1ヶ月以上かかる場合もあります。

2.家庭裁判所での検認手続き(検認当日)

検認の申し立てをしてから1~2ヶ月たつと、家庭裁判所から、検認手続きの日程調整の連絡があります。

検認当日に、家庭裁判所の職員の立ち合いのもと遺言書を開封し、日付、筆跡、署名、本文を確認します。

所要時間は、1~2時間とされていますが、結構待たされる場合もあります。

3.検認証明書の発行申請

相続手続に必要な場合は、検認証明書の発行の申請をします。当日発行される場合と、後日発行の場合があります。

検認手続きにかかる費用

検認手続きにかかる費用は、書類取得費用と家庭裁判所までの交通費、家庭裁判所に支払う費用があります。

内訳 費用目安
書類取得費用(自分達で取得した場合) 10,000~20,000(市役所に支払う費用総額の目安)
家庭裁判所までの交通費 人による
家庭裁判所に支払う印紙代、郵送代 10,000~20,000(目安)

面倒な検認手続き不要な公証証書遺言書・法務局保管遺言書

自宅保管の遺言書の場合、上記のような面倒な検認手続きが必要ですが、公証証書遺言書や法務局保管遺言書の場合、こうした検認手続きは不要です。

遺言書の内容をすぐに実行することができます。

相続人や被相続人に外国人がいる場合、ただでさえ相続手続きは面倒ですので、遺言書だけでも作成しておくと、遺族の手間が大幅に軽減されます。


この記事を作成した人 行政書士 濵川恭一