外国人妻や夫に財産を遺すための遺言書 公証役場と法務局の違い

遺言書

この記事は、国際結婚している夫婦に向けた記事です。外国人夫や妻に確実に財産を遺したい場合、遺言書を作成しておくことをお勧めしますが、公正証書遺言と法務局保管遺言では、作成の手間や費用などが異なります。ご夫婦の状況にあった方法を選んでいただければと思います。

国際結婚の場合、遺言書がないと遺族が困ります

日本人同士の結婚の場合、法定相続でよいなら、そして遺族間でスムーズに話し合いができそうなら、特に遺言書を作成しておかなくても、最終的には相続手続きができます。

しかし、相続人(遺産を受け取る人)の中に外国人がいると、法定相続に必要な書類が集めにくかったり、翻訳が必要だったりと大変になることが多いです。また、遺言書がない場合、こうした相続手続きに時間がかかっていまいます。

公正証書遺言をざっくり説明すると・・・

公正証書遺言書を簡単に説明すると以下になります

  • 公証人が関与し、公証役場で作成されます。
  • 遺言者が公証人に遺言の内容を口述し、公証人がそれを文書にまとめます。
  • 作成された遺言書は、公証人と証人2名の立会いのもとで署名されます。
  • 公証役場で保管されるため、改ざんや紛失の心配がほぼありません。
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要です。

公正証書遺言書は、公証人が作成しますので、法的な信頼性はかなり高いです。ただし、相続人や被相続人に外国人がいる場合、公正証書遺言を作成するために必要な書類が多くなるというデメリットがあります。また、外国語で作成することはできません。

法務局保管遺言書をざっくり説明すると・・・

法務局保管遺言書を簡単に説明すると以下になります

  • 自筆もしくはパソコンで作成した遺言書を法務局で預かってもらいます。
  • 法務局では、書式のチェックのみで、内容の細かいチェックまでは行いません。
  • 法務局で保管されるため、改ざんや紛失の心配がほぼありません。
  • 証人は不要で、比較的費用もかからないため、手間をかけずに作成できます。
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要です。

法務局と公証役場の違い

法務局保管の遺言書と公正証書遺言の違いについて、下記にまとめました。

法務局 公証役場
遺言書を書く人の必要書類 戸籍謄本 戸籍謄本
印鑑証明書
実印
相続財産に関する書類 不要 預金通帳
不動産の登記事項証明書
会社の登記事項証明書
相続する人に関する書類 不要 公証役場によって異なるが、以下の書類が必要な場合が多い

  • 住民票
  • 在留カード
  • 印鑑証明書
  • 出生証明書
証人に関する書類 証人不要 身分証明書(運転免許証など)
外国語での作成 不可

遺言書の作成について、法務局と公証役場で迷ったら・・・

遺言書を作成しようと思った時、法務局と公証役場のどちらにするか、迷われる方は多いです。私は、行政書士という仕事をしている以上、両方で作成していますが、それぞれにメリット、デメリットがあります。また、そのメリデリは、人によって違います。ある人にとってはメリットでも、他の人にとってはデメリットであることもあるからです。

一応の目安としては、

外国語で作成したいなら、法務局一択となります。

また、時間をかけずに安心材料として作成しておきたい場合や、将来内容を修正する可能性がある場合は、法務局のほうが便利です。

一方、時間とお金に余裕があり、多少面倒でもよいから法的に完璧に作成しておきたいということなら、公正証書遺言をお勧めします。

ただ、公正証書遺言にしたからといって、公証人が遺言作成者に有利なアドバイスしてくれるわけではありません。公証人はあくまで中立な立場です。また、外国人の在留資格や手続きについて詳しい公証人はなかなかいないのも事実です。

ですから、いずれの方法を取るにしても、外国人の手続きに詳しい専門家のサポートを受けながら、作成していくとスムーズに進みます。