国際結婚の場合、日本人の相続手続きと異なる点があります。このページでは、国際結婚のご夫婦が相続について知っておいてほしいことをまとめています。
例えば、外国人夫と日本人妻のご夫婦の場合、夫に万が一のことがあった場合、事前に法的な対策を取っておかないと、夫の預金が凍結されたり、不動産の名義変更ができなかったり、遺族年金が受け取れなかったり、いろいろと大変なことが起こります。
逆の場合は、もっと大変です。日本人夫に万が一のことがあった場合、外国人妻がいろんな手続きをしたくても、何をどうやればよいのか全く分からないという事態も起こります。
外国人側が永住者ビザを持っていても、国籍が外国である場合、手続きが非常に面倒です。本国から取り寄せ、翻訳する書類も多数あります。事前に法的な対策を取っておけば、こうした面倒な作業をしなくても、スムーズに相続できる場合が多いです。
遺言書がない場合の国際相続は想像以上に面倒です
遺言書がない場合、日本の法律(民法)では、相続する人とその順位が決められています。相続人の順位は国籍には全く関係ありません。
具体的にみていきましょう。
家族状況 | 相続人(相続する人) |
子供あり | 配偶者と子供 |
子供なし | 配偶者と本人の父母(父母がいない場合、兄弟姉妹) |
そして、法律で定められた相続割合は、以下です。
遺族 | 法定相続割合 |
配偶者と子供 | 配偶者が1/2、子が1/2 ※父母や兄弟姉妹がいても相続分はなし |
配偶者と父母 | 配偶者が2/3、父母が1/3 ※兄弟姉妹がいても相続分はなし |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4 |
もし遺言書がなければ、法律で定められた割合に従って相続されることになります。
ただ、国際結婚の場合、家族関係を証明するのが非常に面倒です。日本人の場合、亡くなった人の戸籍を調べれば、相続人が分かるのですが、日本以外の多くの国では戸籍制度はありません。
ですので、遺言書がなければ、母国の裁判所や弁護士の証明書等が必要になってきます。
例えば、外国人夫が先に亡くなった場合、母国に両親や子供(前婚の子供)がいるのであれば、夫(被相続人)と彼らとの関係を立証する書類が必要になります。
ですが、遺言書があれば、原則、遺言書どおりに財産が相続されます。
遺言書の作り方
遺言書には以下の2つの方式があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶかは、ご本人の財産や家族状況によって異なります。どちらがよいか迷われている場合は、当事務所までご相談ください。お客様の状況に最適な遺言の方法をご提案させていただきます。
自筆証書遺言
手書きで書く遺言書です。費用もかからず、手軽に作成できます。また、何回でも自由に修正できます。不動産や高額な預金がない場合、自筆証書遺言がよく用いられますが、本人が書いたという絶対的な証拠がなく、紛失や偽装といったリスクもあります。
自筆証書遺言に書かれていることを執行するためには、必ず、家庭裁判所の検認が必要です。
また、遺言書の有効・無効をめぐり、親族間でトラブルになることがあります。財産を確実に配偶者に残したい場合は、公正証書遺言にしたほうが安心です。
公正証書遺言
公証役場で作成する遺言です。公証人に支払う費用がかかりますが、遺言書の方式不備の心配はありません。また、公正証書遺言は、公証役場で保管してくれるため、盗難や紛失のリスクはほぼありません。確実に遺言書を残しておきたい場合、公正証書遺言のほうがよいでしょう。
また、公正証書遺言の場合、家庭裁判所の検認は不要ですので、すぐに遺言内容を執行することができます。
国際結婚している人が遺言書を作成するメリット
国際結婚している日本人が亡くなった場合、外国人妻や夫が日本語を流暢に話せる場合は、それほど問題は起こりにくいですが、そうでない場合、日本人の親族が相続手続きを行うことになります。
この時、遺言書があったほうが、圧倒的に相続手続きがスムーズです。日本人の親族がいる場合でも、やはり夫婦間のことは夫婦にしかわからないことがあります。外国人の奥様やだんなさんが安心して日本で暮らしていけるよう、遺言書に必要な情報を書いておきましょう。
また、外国人だからわからないだろうということで、外国人の妻や夫の相続分が少なくなってしまうこともあるようです。相続税がかからない程度の相続財産の場合、税務署のチェックもないため、そういうことが起こりえます。
国際結婚している人が遺言書を作成する時のポイント
国際結婚している人が遺言書を作成する際のポイントをまとめました。
全ての財産をもれなく記載する
万が一、財産にもれがあった場合や明らかにしたくない財産がある場合は、遺言書には「特定した財産以外のすべてを配偶者が受け取るなどと書いておくと良いでしょう。
預貯金については相続割合を記載する
預貯金というのは変動があります。また、A銀行の預金は妻に、B銀行の預金は長女になどと書いておくと、何かの事情でB銀行の預金しか残っていない場合もあります。
不動産の共有相続はできるだけ避ける
共有にしてしまうと、売却や建替えのときに両者の意見が合わなければ動けなくなってしまいます。また、相続した人にまた相続が発生し、物件の所有者がさらに増えてしまうこともあります。複雑になりすぎます。従って、不動産は、物件ごとに取得者を決めましょう。
遺留分を考慮して書く
遺留分とは、民法が保証している最低限度の相続分です。法定相続でもらえる相続分の2分の1が遺留分となります。遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者と子、そして親です。被相続人の兄弟姉妹は遺留分がありません。
遺言書の保管場所を決めておく
遺言書がどこにあるか分からないという事態を避けるため、遺言書の保管場所を決めておきましょう。できれば、A4サイズの書類が入る大きな箱を用意して、そこに遺言相続関係の書類をどんどん入れておきましょう。
例えば、下記の書類です。
- 遺言書(法務局や公証役場預かりの遺言書の場合は役所の預り証も)
- 財産目録、保有不動産の登記事項証明書
- エンディングノート
- 尊厳死に関する宣言書(もしくは尊厳死公正証書)
- 各種サービス、アプリのID、パスワードの一覧(封筒に入れて封をしておく)
私も、行政書士という仕事をしている以上、自分でも遺言書くらいは作っておきべきだと考え、作成しました。
遺言書を作成する時、公証人から「遺言書を作った人は、心の迷いが取れて、長生きしますよ」と言われたのですが、そのとおりだと思います。
遺言書というと、抵抗がある方が多いと思うのですが、作ってみると、本当に気分がすっきりします。
下の写真は、私の遺言書です。あと50年くらい生きても大丈夫なように、ニトリでちょっとおしゃれで頑丈なボックスを買ってきて、そこに、遺言書とかお墓に入れてほしいものを入れています。
国際結婚の相続をサポートします
つくばワールド行政書士事務所では、国際結婚の相続手続きを全面的にサポートしております。具体的には下記のサポートを行っております。
- 公正証書遺言の作成サポート(遺言書の草案作成、公証役場での手続サポート等)
- 相続手続きに必要な戸籍謄本の収集
- 相続手続きに必要な外国人配偶者の本国書類の収集サポート、本国書類翻訳
また、不動産登記や相続税の手続きについては、専門の司法書士や税理士と提携して業務を行っております。国際結婚の相続に関して、必要な手続きを各専門家と協力してサポート可能です。
国際結婚の相続手続き 対応エリア
全国対応(関東以外の場合、提携する弁護士や行政書士を紹介させていただく場合もございます)
国際結婚の相続手続き 費用
費用については、事前に正確な料金をお見積りします。相続手続きにかかる費用の見積もりは難しいのですが、当事務所では、だいたいこれくらいという言い方を極力避け、可能な限り正確な料金を事前に見積もれるようにしております。
国際結婚の相続サポート ご依頼の流れ
- メールにて初回相談をご予約ください。初回相談は無料です。なお、電話だけで費用などを見積もることはできません。
- 当事務所もしくはZOOM等にて、全体的な流れ、必要書類、費用などについてお伝えいたします。また、交通費実費をご負担いただければ、行政書士がお客様の自宅等に訪問させていただくことも可能です。
- 行政書士と打合せ後、納得いただければご依頼ください。
行政書士から一言
つくばワールド行政書士事務所では、これまで10年以上にわたり、多数の国際結婚ご夫婦の法的サポートをさせていただきました。この経験から、下記ケースでしたら、遺言書の作成を検討されたほうがよいと思います。
- 配偶者が遺言執行手続きするのが難しそう(預金口座の凍結解除手続き等)
- 不動産を持っている
- 法定相続人以外に財産を残したい
- 兄弟姉妹に財産を残したくない(両親も子もいない場合、兄弟姉妹にも法定相続されます)
遺言書サポートに関しては、初回無料相談(ZOOM1時間)を行っておりますので、少しでも検討されている場合、無料相談をご活用ください。